既存抗がん剤の併用が 乳がん,腎臓がんに高い効果の新治療法

乳がんと腎臓がんに既存抗がん剤で著効が得られる新治療法が発見された。 既存の抗がん剤の組み合わせで著しい効果が確認されたばかりでなく、 特に治療が難しいトリプルネガティブ乳がんへの効果が期待できるのは特筆される。

乳がんと腎臓がんの新抗がん剤治療法

乳がんと腎臓がんの抗がん剤治療に際して、 既存の抗がん剤「デシタビン」と「ロミデプシン」の2剤を併用投与すると 高い効果が期待できることが発見されたのだ。 それぞれの抗がん剤は単独では乳がんにも腎臓がんにも効果は無いが、 抗がん剤2剤を併用で投与することで高い治療効果が発揮されることが判ったのだ。

この2剤はいづれも白血病つまり血液がんの抗がん剤治療薬であり、 「デシタビン」はDNAメチル化阻害剤、 「ロミデプシン」はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の一種。 既に2剤ともにFDAの承認は受けている。

この「デシタビン」と「ロミデプシン」は、単独使用では乳がんも腎臓がんへも効果は見込めない。 2つの抗がん剤を併用することで発揮される抗がん効果は、 「がん抑制遺伝子」が活性化された結果として、がん細胞の増殖が止められたことも解明されている。

ここで「がん抑制遺伝子」とは、まさに がんの発生を抑制する遺伝子であり、 がん抑制遺伝子に機能障害が生じると直接にがん化の原因となる重要な遺伝子なのだ。 がん抑制遺伝子は、がんの抑制機能を持つタンパク質を生成する遺伝子なのだ。

新治療法では、「sFRP1遺伝子」というがん抑制遺伝子が活性化されたことで、 乳がんと腎臓がん細胞の異なる細胞株をも全て死滅させる効果が発揮された。 新治療法の特筆すべき特徴としては、 最新の抗がん剤、分子標的薬やオーダーメイド治療薬でも治療が困難なトリプルネガティブ乳がん に対しても、がん細胞抑制の効果が高かったことだ。

このsFRP1遺伝子の活性化効果は、乳がんと腎臓がんの新治療法だけでなく、 他のがん治療にも応用できる可能性が高く、さらなる研究が進められる。 「sFRP1遺伝子」だけでなく、 「がん抑制遺伝子」を活性化させるがん治療法が開発されれば、 がん患者の多くが、「奇跡の回復」の恩恵に授かれることは容易になるかもしれない。

世界中が注目するがんの新治療法は、 米国ロチェスター市のメイヨークリニック(Mayo Clinic)で研究されている。

トリプルネガティブ乳がん

乳がんが発症する確率(罹患率)は30歳代から増加し、 50歳前後が最大でその後は次第に減少する。

乳がんを発症する女性の数は多く、乳がんで死亡する数の3倍以上。 東アジアよりも欧米の乳がん罹患率が高く、特に米国白人の乳がん罹患率が高いことが特徴的、 アメリカでは胃がんと乳がんを合わせて約8万人の患者がいる。 イギリスでも年間約5万人の乳がん患者が発症している。 米国の日系人が日本国内在住者より乳がん罹患率が高いことは、 乳がんの発症が食生活に大きく関与していることを示す典型例だ。

乳がんの罹患率、死亡率は年々に増加傾向にあり、 近年に生まれた人ほど乳がんを発症する確率が高い傾向にあるという。

乳がんの中でも治療が困難となる「トリプルネガティブ乳がん」とは、 がんの発症原因で分類される。 乳がんの主要因子と言われ、それぞれに治療薬の開発が進む、

  • エストロゲン受容体
  • プロゲステロン受容体
  • HER2(ヒト表皮細胞成長因子2)

の3因子が全て陰性である乳がんが「トリプルネガティブ乳がん」と呼ばれる。、 トリプルネガティブ乳がんは、既存の抗がん剤による治療効果が見込めないことから、 抗がん剤治療が極めて困難な実情があり、生存率も低くなってしまう。 (HER2受容体に異常がある場合には、乳がん特効薬とも言える抗がん剤が既に開発されている)

腎臓がん

腎臓がんの罹患率は、50歳から70歳まで増加し、男性の死亡率が女性の約3倍であるのが特徴。 また、腎臓がんはすい臓がんと同様に自覚症状が殆ど無いため、発見が遅れる傾向が強い。 腎臓がんの発見時は、既に末期がん、ステージ4の場合が多いため、治療方法が限定されてしまうのだ。

日本は、イギリスを除く欧米諸国よりも腎臓がんの罹患率は低いが、 治療が困難であるため新しい治療法は強く求められてきた。

乳がん治療情報:新薬、新治療法