転移性の末期乳がんが5ヶ月で完治した新治療法

癌ワクチン」とは、患者の持つ免疫機能に働き掛けて癌細胞を封じ込めるための医薬品。

癌部位を切除除去する「外科手術」、抗癌剤などの薬品による「化学療法」、放射線で癌細胞を殺す「放射線治療」という3大療法の治療技術は格段に進歩した。がんは治る病気に近づきつつあるものの、癌根絶へはまだまだ遥かに遠い道のりが横たわっている。

しかし、この数年来で第4の治療法を模索する研究が活発化している。その一つが、患者の免疫機能を活用し、癌に立ち向かう「免疫治療」だ。免疫力を高めて がんに克つ!

免疫力が活性化される栄養(βグルカンなど)を含む健康食品・サプリメントを食べたり、体温を高く保ったり、または、お笑い番組を見て大笑いしたりすることも、広義では免疫力の強化=免疫治療と言える。これらは人類が古くからの体験談として語り継がれている治療法で、多くはないものの軌跡の快復が起こった事例がある。(誇張された宣伝広告ほどは無いが。)

全ての免疫治療の共通する特徴は、3大療法に比べて格段に副作用が少ないこと。これは、治療で弱りがちな がん患者でもQOL(生活の質)を落とすことなく、がん治療に臨み、治療を継続できることに繋がる。

最近注目されている免疫治療の一つである免疫細胞療法は、細胞レベルでがん細胞の駆除を目指す治療法。体内に侵入した異物を排除する免疫システムの働きを最大限に生かし、免疫細胞が癌を的確に攻撃できるようサポートするという発想から生まれた。

細胞が癌化して「がん細胞」になると、表面に異常を示す抗原が出現する。この抗原を目印として、免疫細胞ががん細胞を攻撃するのだ。日常に体内で発生しているがん細胞は自然と免疫細胞によって駆除されている。しかし、何かの原因によって、発生するがん細胞と免疫に駆除されるがん細胞のバランスが崩れたために、免疫細胞の手に負えないほど増殖してしまった状態を、がんの発病とされる。

免疫細胞療法の一種である「がんワクチン療法」は、人工的に合成された抗原を注射することで、免疫細胞が がん細胞と結合した抗原を「敵」と認識して攻撃するがん治療法だ。

53歳の米国人の著しい快復例では、他の臓器にも転移しているステージ4の乳癌、いわゆる末期がんの告知を受けた後から、5カ月間で6回の癌ワクチン接種を上腕に注射し、5年後にはがん細胞が体内から消失した。通常のステージ4の末期乳がんの5年生存率は20%以下にもかかわらずだ。

また、膵臓癌の手術を受けたが、摘出すれば命に関わる場所にがんがあったために摘出できなかった男性は、臨床治験で癌ワクチンの投与を受けると9カ月後の検査で癌は完全に消滅した。その他、手術が不可能とされた膵臓癌患者5人のうち3人の症状が安定しているという。

免疫細胞療法は研究自体がまだ発展途上のために、全てのがん患者を救う魔法の万能薬にはまだまだ程遠い。しかも、日本では健康保険の適用外なので、高額な医療費(約150万円前後)が全額自己負担である点も高いハードルとなっている。

既にアメリカでは前立腺がん治療に効果のある癌ワクチン(抗がん剤「プロベンジ」)が、米食品医薬品局(FDA)の認可を取得して広く使われ始めている。その他の免疫細胞治療に関する臨床研究も進行中。この動きは、日本など世界中へと広がっている。

癌ワクチンの最大の問題は、万人向けに人工合成されるため、必ずしも自分のの抗原と合致しないことだ。

患者のがん細胞が持つ抗原とワクチンの抗がんが一致しなければがん治療の効果は無いため、事前の確認が不可欠となっている。この点の改良を目指したのが、がん患者本人のがん細胞を抗原として使う樹状細胞ワクチン療法であり、これは究極のテーラーメイド治療とも考えられている。

さらには、がんを攻撃する免疫細胞である「T細胞」を自身から摂取し体外で増殖させた後に体内に戻す自己免疫細胞療法も研究が進みつつある。

旧来の抗がん剤や放射線によるがん治療では、癌細胞を直接的に叩く効果は高いものの、 正常細胞へのダメージも大きく、吐き気や脱毛などの副作用が起きやすく、さらには、免疫機能も大きく損なうリスクがあった。また、治療中に癌細胞が抵抗力を持つことで、治療効果が弱まってしまう問題があった。

免疫治療には副作用が無い、人体に生来備わっている免疫機能を利用するため副作用が出難いのだ。 そのため、がん患者は生活の質を保ちつつ、癌の進行度合いに関わらず繰り返し治療を受けることができる。癌の進行を遅らせたり止めたりする効果が期待できる。

従来の3大がん療法と併用できる点も免疫療法の強みの1つだ。 放射線やある種の抗癌剤には癌に対する免疫の働きを高める作用があり、免疫治療との併用で相乗効果が望める。 また手術で腫瘍を取り除いた後に、画像診断では分からない微小ながん細胞は、免疫細胞の格好の駆除対象となるからだ。

なるべく早い段階で免疫治療を施せば、より高い効果が期待できるだろう。 肺癌の手術後に免疫細胞治療を受けた患者の5年生存率は、免疫治療を受けていない患者より20%以上も高いという研究報告もあるのだ。これは、手術では取り切れない微小な細胞を早期に駆除できることで、再発や転移を抑制しやすいことが寄与している と考えられる。

免疫治療の効果を上げる最大のポイントは、免疫機能が弱っていない段階で早期に免疫治療を実施することとされる。

がんワクチンは前立腺癌用のワクチン「プロベンジ」が2010年にFDAに認可された後、 2011年には転移性メラノーマ(悪性黒色腫)に効果のある抗がん剤「エルボイ」も認可された。 「エルボイ」は、免疫が本来の力を発揮できないよう邪魔する分子を抑え込むことで、免疫ががん細胞を駆除するがんワクチン。

米国立癌研究所(NCI)によれば、がんワクチンは、死に至るリスクが高い膵臓癌や脳腫瘍から、 完治が可能な精巣癌 まで、150種類以上が抗がん剤の新薬として研究途上にある。 2011年には、転移性の卵巣癌と乳癌に対する臨床試験でがんワクチン「PANVAC」が一定の効果を示したと発表された。 また、脳腫瘍摘出後の患者への がんワクチンの投与で生存期間が約1年延びたとの報告もある。

この10~20年の間に免疫の仕組みが解明され、実用化が進んでいる免疫のメカニズムを利用して癌治療を闘う時代になりつつあるのだ。

免疫力を活用した第4のがん治療には、下記の3つに分類されるだろう。仕組み、特徴を理解した上で治療に望みたい。

1. がん細胞に免疫攻撃の目印を付ける免疫療法

癌細胞にある特有の目印(=抗原)に対して、免疫細胞(キラーT細胞)に攻撃させるがん治療法。人工合成したタンパクやペプチド(タンパク質のかけら)を目印として体内へ注射する癌ワクチン治療と、がん患者の血液中から免疫細胞の一種樹状細胞を分化し、患者本人の癌抗原をこの樹状細胞に教え込んだ上で、体内に戻す樹状細胞ワクチン療法がある。

2. がん細胞を攻撃する免疫細胞を増殖させる免疫療法

がん細胞を攻撃する免疫細胞であるキラーT細胞、NK(ナチュラル・キラー)細胞を患者自身から採取して、体外で培養増殖し、がん患者の体内に戻す治療法。

3. 既存の免疫力を活性化する免疫療法

生来備わっている免疫力を活性化することで、がん細胞を駆除する治療法。

サプリメント療法(食事療法)

多種多様なサプリメントががん治療に供されているが、免疫力に作用する可能性が一番高いのはβグルカン(ベータグルカン)という成分を含むサプリメントや健康食品。きのこを原料とするものから酵母を原料とするものまで、価格的にも非常に開きがあるので高額過ぎる商品には注意が必要。近年に精製度が向上したパン酵母由来のベータグルカン健康食品が価格あたりの価値が良好。

温熱療法

免疫細胞は体温が上がることで活性化されることが判っている。治療機器を用いてがん患部周辺のみを暖める治療法から、”湯治”つまりは入浴で体温を上げる治療法まで、体温を適度に上げることは、がん治療で重要な免疫力の活性化に寄与することでがん細胞の減少に結びつく。

前立腺がん治療情報:新薬、新治療法